「中性脂肪値が高いですね」
健康診断などを受けると言われるこの言葉。さすがに「このままではいけない」と思っても、中性脂肪が高いことで何が悪いのかが分からなかったりします。
このページでは、中性脂肪が高いと何が悪いのか、どのような問題が起こるのかという「中性脂肪に潜むリスク」を紹介していきます。
もくじ
中性脂肪値が高いと起こりやすくなる病気とリスク
まず、中性脂肪が高いことで起こりやすくなる病気として有名なのが「脂肪肝」、および「動脈硬化」に起因する「心筋梗塞」「脳梗塞」があります。
つまり、「命に関わる病気リスク」が増えます。
これが、中性脂肪が高いことがなぜ悪いのかの理由です。
医師は、患者に危険性や不快感を与えないように、「中性脂肪が高いですね」とだけしか言わないこともあります。しかし、実際に上記のような病気やリスクが確実に増えているのです。
ここでは、「何が悪いのか」をさらに具体的に、紹介していきます。中性脂肪値が高いと診断されたら、下記を読んで、「今の自分の体に起こっていること」と向き合ってみましょう。
病気とリスク1:血液がドロドロになります
中性脂肪が高いと、血液はドロドロになります。血流が悪くなるので、血液の流れが悪くなり、意図しない所で血液が貯まりやすくなります(血栓ができやすくなります。)
そうすると、心筋(心臓を動かす筋肉)の栄養血管である冠動脈が詰まることによる「心筋梗塞」や、脳に血液が届かなくなり脳の酸素欠乏、栄養不足になることによる「脳梗塞(脳が壊死する)」になります。
病気とリスク2:動脈硬化が進行していきます
中性脂肪が高いと、動脈硬化も進行していきます。動脈硬化は、文字通り「動脈」が「硬くなる」ことによって起こるものです。
動脈硬化は、自覚症状がほとんどありません。
しかし、中性脂肪が高いと、善玉コレステロール(HDL)が減り、悪玉コレステロール(LDL)が増えるため、着実に体を蝕んでいきます。その結果、動脈硬化による心筋梗塞、脳梗塞が起こりやすくなるのです。
病気とリスク3:高血圧と高血圧に関連する病気リスクが高まる
先ほど、動脈硬化について紹介しましたが、動脈硬化を起こした血管は弾力がなくなり、血管内圧が上昇しても拡張できなくなり「高血圧」となります。
高血圧になると、「頭痛」「めまい」「動悸」などの症状が現れたり、進行し心不全徴候まで出現すると、「下肢を中心とした浮腫(むくみ)」「息切れ」の症状も現れ、さらに血管が破れやすくなるため、命に関わる血管や脳のトラブルに発展することがあります。
中性脂肪はリスクの相乗効果を生み出すことが一番の怖さです
ここまで、「血液がドロドロになる」「動脈硬化が進行する」「高血圧になる」という3つのリスクを紹介しましたが、これらは「相乗効果で負のスパイラルを起こす」ことが分かっています。
血液をドロドロにする中性脂肪値が高い⇒悪玉(LDL)コレステロールも上昇⇒動脈硬化⇒高血圧⇒動脈硬化の進行⇒血流速度低下⇒血液がさらにドロドロ⇒血管が詰まる(心筋梗塞/脳梗塞)となる場合や、
動脈硬化の進行によって血管が脆くなり破れる(大動脈瘤の形成・破裂/脳出血)こともあります。
そこで厚生労働省は、運動や食事の改善と共に、血管や心臓の病気リスクを低減させることが分かった「DHA・EPA」を1日あたり1000㎎摂取するのが良いという方針を決めました。
もちろん厚生労働省の「推奨」であり、「義務」ではありませんが、今現在中性脂肪値が高いと言われた人は、DHA・EPAを摂取してリスクを減らしながら、運動などで中性脂肪を減らす努力をする必要があるということです。
【治療には莫大な費用もかかります】
例えば心筋梗塞にかかると、心臓カテーテル検査に6万円、カテーテル治療に40万円、バイパス手術をした場合は120万円ほどのお金がかかります。
DHA・EPAは厚生労働省が推薦していることから分かるように、「医学的効果」の認められた成分です。その摂取を行うことが、「経済的負担を下げる」ことにもつながっていきます。
中性脂肪は高いから悪いわけではありません
しかし、「高いから低くする」という発想も良くありません。なぜなら、中性脂肪は人間の大切なエネルギー源で、ある程度「必要なものだから」です。
実際、過度なダイエットによって中性脂肪値が低くなりすぎてしまった方の中には、「慢性的な疲労感」「肌の乾燥や老化」「動悸」「偏頭痛」などで悩んでいる方もいます。
ですので、中性脂肪の基準値である「50~149mg/dl」を、次の健康診断での目標にしながら値を低くしていきましょう。
中性脂肪が高いと言われたらまずやること
ここまでは、「中性脂肪値が高いと何が悪いのか?」について紹介してきましたが、次は、「中性脂肪値が高いと言われたら、まず何をしたらよいのか?」について簡単に紹介します。
これはよく言われていることであり、当然のことなのですが、まずやるべきは「生活習慣の見直し」です。
なぜなら、今までの生活習慣が原因で中性脂肪値が高くなっているからです。
今までの生活習慣を振り返りながら、どこが悪かったのかを振り返るとともに、改善していきましょう。
もちろん「原因」となる習慣もありますが、「直感で良くない」と思ったことは大体合っていることが多いため、まずは気負わず、「あれが良くなかったかな~」「まずは、○○から改善してみようか」と、気楽にでも「始める」ことが大切です。
そして、中性脂肪と上手に付き合っていくライフスタイルをつくっていきましょう。
この記事の監修者

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現役内科医・日本内科学会認定内科医
近畿大学医学部卒。2004年医師免許取得(医籍登録番号:第441704号)、2016年医学博士号取得