中性脂肪の薬・市販薬・ジェネリックの解説と副作用【医師監修】

動脈硬化性疾患予防ガイドライン(2017年度版)では、脂質異常症のスクリーニングについて以下のように定められています。

【脂質異常症診断基準(空腹時採血)】
LDLコレステロール 140㎎/dL以上 高LDLコレステロール血症
120~139mg/dL 境界域高LDLコレステロール血症
HDLコレステロール 40mg/dL未満 低HDLコレステロール血症
中性脂肪(TG) 150mg/dL以上 高トリグリセライド血症
Non-HDLコレステロール 170mg/dL以上 高Non-HDLコレステロール血症
150~169mg/dL 境界域高Non-HDLコレステロール血症

医師はこうした数値を見たり、年齢や血圧、喫煙などの危険因子を見たり、生活習慣を聞いたりしながら、その人に応じた対処をしていきます。

そして今回は「中性脂肪と薬」についてです。
基本的に大事なことは「食事療法」と「運動療法」ですが、最近は中性脂肪に対する市販薬なども発売されてきています。

身近だからこそ取り扱いに注意が必要なのが薬です。
このページでは、中性脂肪に効果のある薬と、副作用などの注意点について紹介していきます。

\【PR】中性脂肪を低下させるトクホ/

中性脂肪の薬の種類と特徴

先ほども紹介したように、中性脂肪の治療のファーストステップは「食事療法」と「運動療法」です。

そのうえで、必要だと判断した時に薬物療法も行います。
中性脂肪も含めた「脂質異常症」の際に使用する薬は、大きく分けて7種類あります。

  • スタチン(HMG-CoA還元酵素阻害剤)
  • 陰イオン交換樹脂
  • 小腸コレステロールトランスポーター阻害薬
  • フィブラート
  • ニコチン酸誘導体
  • プロブコール
  • 多価不飽和脂肪酸

それぞれの特性は、日本動脈硬化学会の資料にて以下のように記載されています。

脂質異常症治療薬の薬効による分類
LDL-C TG HDL-C
スタチン ↓↓↓
陰イオン交換樹脂 ↓↓
小腸コレステロールトランスポーター阻害薬 ↓↓
フィブラート ↓↓↓ ↑↑
ニコチン酸誘導体 ↓↓
プロブコール ↓↓
多価不飽和脂肪酸

このように基本的にはLDL・TGを下げてHDLを上げる薬が多いですが、状態に応じて処方される薬は当然変わります。

次からは、中性脂肪を下げる作用のある「スタチン」「小腸コレステロールトランスポーター阻害薬」「フィブラート」「ニコチン酸誘導体」「多価不飽和脂肪酸」について、作用と副作用を紹介していきます。

多価不飽和脂肪酸

多価不飽和脂肪酸の代表的な薬は「エパデール」「ロトリガ」です。

私たちがよく使う言葉で言う「EPA(エイコサペンタエン酸)」をエチル化し高純度にした「イコサペント酸エチル錠剤」で、純度96.5%以上のEPAが配合されています。

有名な薬には「エパデール」「エパデールS」「ソルミラン(ジェネリック)」などがあり、エパデールSには300mg/包、600mg/包、900mg/包、ソルミランには600mg/包、900mg/包のイコサペント酸エチルが配合されています。

ジェネリックも「エパラカプセル300」「イコサペント酸エチルカプセル300mg「日医工」」「イコサペント酸エチルカプセル300mg「フソー」」など豊富です。

「ロトリガ」も有名ですがこちらはDHAとEPAの合剤です。
「今日の治療薬(2018年版)」を見ると、「2g包中EPA930mg、DHA750mg」が含有されているとの記載があります。
ロトリガを推奨する医師もいれば、エパデールを処方する医師もいます。

また、最近は「エパデールT」という市販薬が発売されました。
エパデールTは「要指導医薬品」で、認定薬剤師からの指導を対面で受ける必要がありますが、「病院に行かなくても買える」ことからも分かる通り、多価不飽和脂肪酸は非常に身近な薬の1つです。

なお、出血している人には使うことができません
また、抗凝血剤の「ワルファリン」や、血小板凝集を抑制する「アスピリン」「インドメタシン」との併用は注意が必要とされています。

重大な副作用には肝機能障害や黄疸があり、他にも「発疹」「皮下出血」「貧血」「悪心」「便秘」など頻度は不明とされていますが、副作用が報告されています。

特にエパデールは身近ですが、薬ですから150mg/dL以上の人にしか処方できません。
中性脂肪値が少し高めな方にはDHAEPAサプリのほうがオススメです。

フィブラート

フィブラートは中性脂肪を分解する酵素「リポ蛋白リパーゼ(LPL)」の産生増加と活性亢進の働きがあります。

中性脂肪を分解するとともに合成も抑制するため、特に中性脂肪値が高い方に処方されます。

代表的な薬には「ベザトールSR」「リピディル」「トライコア」などがあり、ジェネリック医薬品もあります。

例えばベザトールSRは人工透析患者や、重篤な腎障害のある人、血清クレアチニン値が2.0mg/dl以上の人、妊婦などには使用することができません。

例えばリピディル・トライコア(一般名「フェノフィブラート」)は肝障害や腎障害のある人、胆のう疾患のある人、妊婦・授乳婦の方は使用することができません

なお、多くの高脂血症の治療に用いられ、スタチンと併用されることもあります。

スタチン(HMG-CoA還元酵素阻害剤)

スタチンも高脂血症の治療によく使われる薬の1つです。
コレステロールの合成を抑えたり、血中LDLを減少させたり、HDLを増やしたりする働きがあります。

先発品は6種類。
「メバロチン」「リポバス」「ローコール」「リピトール」「リバロ」「クレストール」があり、6種類すべてにおいてジェネリック医薬品が存在します。

この6種類の薬に共通する副作用として、「横紋筋融解症」「ミオパチー」「肝障害」「間質性肺炎」があります。
また、リピトールの副作用として「空腹時血糖値とHbA1c値の上昇」が報告されています。

なお、厚生労働省によると、スタチンの服用で筋肉痛になる人が2~7%存在し、これは気にするべき症状の1つです。
飲み始めた初期(数週間~数か月)に筋肉の症状を感じたら、必ず主治医に相談するようにしてください。

ニコチン酸誘導体

ニコチン酸誘導体は脂質代謝を改善する働きがあります。

末梢脂肪組織における脂肪分解が抑制され、遊離脂肪酸の肝臓への流入が減少した結果、リポ蛋白であるVLDL合成が抑制されます。

VLDLは中性脂肪を運搬する蛋白であり、これが少なくなると、血漿TGは低下します。
さらに遊離脂肪酸動員の抑制によるTG低下作用もあります。

代表的な薬には「ユベラN」「ペリシット」「コレキサミン」などがあり、「顔面潮紅」「頭痛」などの副作用が報告されています。

併用療法ではスタチンと併用されることが多いですが、スタチンほどよく使われてはいません。

小腸コレステロールトランスポーター阻害薬

小腸コレステロールトランスポーター阻害薬は、食事由来のコレステロールの吸収を小腸で阻害する薬です。
代表的な薬には「ゼチーア」があります。

スタチンとはよく併用されていますが、重篤な肝障害患者だけは、スタチンと併用すると、肝障害が悪化するため使うことができません。

また、副作用としては、消化器症状、肝障害、CK上昇などがあります。

薬は万能ではない

ここで覚えておいてほしいことは、中性脂肪に対する薬はあるものの、万能ではないということです。

ガイドラインでも、薬物治療はあくまで「考慮する」という程度です。
「絶対に薬物治療をする必要がある」わけではありませんし、特に若年者や女性などのリスクが低い人は薬物治療はあえて控えることが多いです。

「薬を処方してくれなかったから悪い先生だ」
そう思われることもあるかもしれませんが、中性脂肪値に対して大事なのはやはり「食事」と「運動」なのです

薬を処方すれば「数値上」は下がるでしょう。
しかしこれは根本的な解決にはなっていません。
なぜなら薬をやめたらまた数値が悪くなってしまうからです。

中性脂肪と食事、中性脂肪と運動については下記記事で紹介しています。
習慣を改善することは大変なことですが、今日から「1つの改善」でもよいので、第一歩を踏み出してみませんか?

中性脂肪値を下げる運動方法とは?有酸素運動の方が効果的なのは嘘だった?!

2017.12.19

中性脂肪を下げるには?数値改善と基準値内を目指すための方法論【内科医監修】

2017.10.08

現役内科医に教えてもらった!中性脂肪が高い7つの原因

2017.09.25

安全なDHAEPAサプリの選び方

さて、ここまで紹介してきたように薬は万能ではありません。
しかしDHAEPAサプリは上手に活用すべきです。

DHAEPAは主に青魚に含まれていますが、現代の日本人は、食の欧米化によって魚を食べることが少なくなりました。

つまり、DHAEPAが不足している人が多いのです。
その不足分をサプリメントから補うだけで、中性脂肪値が改善することもあります。

例えば特定保健用食品の「イマークS」のように、ヒトでの臨床試験で中性脂肪値が約20%低下したものもありますので、上手に活用していくことが大切です。

イマークSの口コミ!中性脂肪対策で飲んで血液検査をしてみた結果

2018.03.19