「アルコールが中性脂肪を増加させる」
これは厚生労働省のHPにもある通り「事実」です。
アルコールが関係する高脂血症は中性脂肪(トリグリセリド)とHDLコレステロールの増加です。飲酒時の摂取エネルギーを減少させれば基準値にもどる可能性もあります
-引用元厚生労働省e-ヘルスネット,アルコールと高脂血症
しかし、なぜアルコールによって中性脂肪値は上がるのでしょうか?
また、お酒の1日の上限量の目安はないのでしょうか?
このページでは、現役内科医監修のもと「アルコールと中性脂肪の関係性」を紹介していきます。
それでは、いきましょう!
もくじ
お酒の何が中性脂肪を高くするの?答えは「アルコール」です

「お酒は中性脂肪によくない」と言われます。
しかし、まず大前提として、お酒の何が中性脂肪に悪いのでしょうか?
ホップでしょうか?
麦芽でしょうか?
実はこの答えは「アルコールそのもの」です。
では、なぜアルコールが中性脂肪を高くするのか、そのメカニズムに迫ってみましょう。
- なぜアルコールが中性脂肪を高くするのか?
- アルコール代謝を優先する肝臓
- 脂肪分の多い「つまみ」がさらに中性脂肪を高める
なぜアルコールが中性脂肪を高くするのか?

まず、ご存知の通り、アルコールは「肝臓」で分解されます。
アルコールは体にとって「毒」。
しかし、肝臓があるおかげでアルコールと言う毒素を分解することができています。
そのため、肝臓機能をサポートする栄養素として「γ-GTPを下げるには?有効な対策方法5選」で紹介したような「シジミ」「牡蠣」「クルクミン」などを意識して摂取している人も多いでしょう。
しかし、肝臓はアルコールや老廃物といった体にとって毒になるものを解毒するだけではありません。
他にも糖やたんぱく質、脂肪をエネルギーに変える「代謝」の役割や、消化酵素として重要な「胆汁」を生成・分泌する役割があります。
このように肝臓は様々な働きをしているのですが、体にアルコールが入ってくると、どうなるでしょうか?
アルコール代謝を優先する肝臓

アルコールが体内に入ってくると、肝臓は「アルコールを分解する」という働きを最優先させます。
なぜならアルコールが毒だからです。
体にとっては緊急事態なのですから、当然の反応だと言えるでしょう。
そして、肝臓はアルコールを分解しきるまで、24時間常に働き続けます。
しかし、肝臓も相当な働き者ですから、ちょっとやそっとじゃ他の働きもおろそかにしません。
規定量であれば、きちんとすべての役割を果たしてくれます。(これについては後述します。)
ただし、問題なのは、アルコールが脂肪酸の分解(β酸化)を抑制してしまい、脂肪酸の分解が進まず、徐々に中性脂肪として蓄積され脂肪肝となったりすることです。
また、お酒のアルコールの成分であるエタノールは、アセトアルデヒド→酢酸と代謝され、その後、水と二酸化炭素まで分解されますが、過度な飲酒で酢酸が多くなると一部は酢酸→アセチルCoA→長鎖脂肪酸と、合成され、長鎖脂肪酸を構成成分とする中性脂肪が合成されてしまいます。
脂肪分の多い「つまみ」がさらに中性脂肪を高める

そしてアルコールに良く合う「つまみ」ですが、つまみにも脂分が多い食べ物がたくさんあります。
ただでさえアルコールの分解に忙しいにも関わらず、脂肪もどんどん入ってきますので、代謝しきれなくなっていきます。
そうなると、肝臓がオーバーヒートしてしまい、きちんとした役割が果たせなくなります。
その結果として脂肪が肝臓にたまった状態である「脂肪肝」が起きます。
さらに、肝臓に蓄積された中性脂肪は、皮下脂肪・内臓脂肪にもなります。
これ以外にもまだまだ悪影響があるのですが、肝臓にとってはかなりの負担になっていることは容易に想像できるでしょう。
結論を一言で言えば、アルコールの種類に関わらず、アルコールは中性脂肪値を高めるという事です。
①アルコール自体が中性脂肪に悪影響を及ぼす
②アルコールと一緒に食べる「つまみ」も悪影響
では、どれくらいのアルコール量であれば、肝臓も耐えることができるのでしょうか?
1日に摂取できるアルコールの上限
アルコールは1日に成人男性で40g、成人女性で20g程度が目安とされています。
しかし、40g、20gと言われても、あまりぱっとしませんよね。
そこで、アルコール20gがどれくらいの量なのかを具体例とともに紹介します。
- ビール中瓶1本500ml⇒アルコール度数5度・アルコール約25g
- 日本酒1合180ml⇒アルコール度数15度・アルコール約27g
- 焼酎0.6合110ml⇒アルコール度数25度・アルコール約27.5g
- ワイン1/4本180ml⇒アルコール度数14度・アルコール約25.2g
上記が1日あたりのアルコール摂取量の目安です。
このように摂取目安を守っていれば、アルコールの中性脂肪への影響を減らすことができます。
事実、適度の飲酒が、冠動脈疾患(狭心症、心筋梗塞)の発症を抑制することが、1977年発表のFramingham Studyなどの疫学調査によって報告されています。(⇒現役内科医に教えてもらった!中性脂肪が高い7つの原因)
しかし、お酒の量のコントロールは難しいですから、最近は「やはりお酒は飲まない方がいい」という流れになってきていますので、できれば飲まない方が良いです。
アルコールに含まれる糖分も中性脂肪と関係している

また、アルコールには「糖分」もかなり多く含まれています。
例えばビール1缶でご飯1杯分ほどのカロリーがあります。
お酒を飲む人は、ご飯を一緒に食べないことが多いです。
これは「お酒」でカロリー補給をしているからです。
そして、カロリーを二重に摂取するからご飯を食べると美味しくないと感じるわけです。
話がそれましたが、「できるだけ中性脂肪値を高くしないお酒が良い」という場合には、カロリーの少ないお酒を飲むようにしてみるのもいいかもしれません。
種類 | 糖質(/100ml) | カロリー(/100ml) |
ビール(淡色) | 3.1g | 40kcal |
ワイン(ロゼ) | 4g | 77kcal |
日本酒(純米酒) | 3.6g | 103kcal |
焼酎・乙類 | 0g | 146kcal |
ウイスキー | 0g | 237kcal |
アルコールによって中性脂肪が高くなると何が悪いのか?
では、アルコールによって中性脂肪値が高くなってしまうと、体にどのような悪影響があるのでしょうか?
これについては下記記事で「3つの重大リスク」を説明しています。
さいごに

ここまでアルコールと中性脂肪の関係を紹介していきましたが、アルコールは中性脂肪だけでなく、肝臓にも負担をかけ、脂肪肝、肝硬変といったリスクも増やします。
中性脂肪値が高いだけでも、動脈硬化、心筋梗塞といったリスクが増えているのですから、やめれるのであればやめた方がいいことは間違いありません。
しかし、それでもやめられないのがお酒です。
ですので、もちろん今回紹介したように1日の摂取目安を意識することも大切なのですが、お酒をやめる以外のできる限りの中性脂肪対策をしてみてはいかがでしょうか?
お酒はやはり付き合いもありますから、そういうお酒以外の対処術を知っておくことも大切です。
そんな対処法も書いていきたいのですが、さすがに長くなりすぎてしまうので、これについては下記の2記事を参考にしてみて下さいね。
この記事の監修者

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現役内科医・日本内科学会認定内科医
近畿大学医学部卒。2004年医師免許取得(医籍登録番号:第441704号)、2016年医学博士号取得